第84回アカデミー賞作品賞をはじめ5部門で受賞したフランス映画で、特筆すべきはサイレント映画。
そうです。
白黒の無声映画なんです。
昔の映画は、スクリーンの前にオーケストラがいて、映像に合わせて音楽で盛り上げるます。
セリフはなく字幕が所々で出て、役者はオーバー表現な演技で演出をしています。
そんなサイレント映画を、現代のCGやら3Dやらが流行っている今の時代で上映するという、挑戦的な作品だと思います。
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物語は、サイレント映画の看板役者ジョージが、オーディションで採用された女優ペピーにアドバイスをしたところ、その女優は瞬く間に売れっ子女優へと成長していく。
しかし、時代はサイレントからトーキー(有声)へ。
ペピーはその歌声が聞きたいというファンの希望に応え、さらに売れていく。
だが、ジョージはプライドが邪魔をしてトーキー映画を認めない。
映画会社から独立してサイレント映画を作るものの売れず、妻からも屋敷を追い出され貧乏暮らしに。
献身的に尽くしてくれた運転手も、給料を払えないため解雇。
売れっ子の頃の燕尾服を質屋に入れ、私物をオークションにかけて生活費を稼ぐも、行き詰まってしまう。
酒に溺れ、サイレント映画のフィルムに火を放つも、彼に最後まで寄り添っていた愛犬アギーに助けられ、九死に一生を得る。
病室に駆けつけるペピーは、ジョージを自宅に呼び、世話になることに。
しかしジョージはペピーの屋敷で、オークションにかけた自分の思い出の品々を見つけてしまう。
ペピーは自分の恩人であるジョージを助けたい一心だったのだが、ペピーの情けで生かされていたと思い込み、人生にも絶望して自殺を図ろうとするジョージ。
そして…
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と、いつものように物語を書いてみましたが、本作は映画の歴史が分かる作品でもある。
サイレントの名優はトーキーに馴染めずに、次々と姿を消していく。
特にトーキーでは自声が分かってしまい、その声に幻滅してファンが離れていくことが多かったそうだ。
本作のジョージもそれを恐れていたのだろう。
しかし時代はトーキーとサイレントを生かした作品ミュージカル映画を生み出していく。
本作でもジョージとペピーはタップダンスを披露しているが、ミュージカルならばサイレントの派手な演技と踊りと、トーキーの歌声が見事に融和している。
ワタシもウェストサイド物語は好きだが、確かに演技は結構派手だものね。
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それにしても、今の時代にサイレントをやろうとするのは見事だと思う。
アカデミー作品賞の他に、ミシェル・アザナヴィシウスは監督賞、ジョージ・ヴァレンティンは主演男優賞、そして衣装デザイン賞と作曲賞の5部門での受賞も、ある意味納得である。
しかし、最後にジョージの愛犬アギーに動物賞をあげたいものだ。
アギーの存在が本作品にほんわかとした雰囲気を加えていると思う。
映画館で見て欲しいと思うけど、映画館で寝てしまうような人は勘弁して欲しい。
となりでイビキかかれると興ざめである。
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